アジア版オリンピックと呼ばれる「アジア競技大会」正式競技に“eスポーツ”が選出。しかし日本では問題も?
アジアオリンピック評議会が17日、中国アリババグループのAlisportsと提携し、2022年に中国の杭州で開催する「アジア競技大会」において“eスポーツ”が正式なメダル種目となることを発表した、と各メディアで報じられています。
競技として使われるゲームタイトルは未定。前もって2017年9月にトルクメニスタンで開催する「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」や、2018年にインドネシアで開催する「アジア競技大会」にて、デモンストレーションが行われる予定です。
※参考:インサイド
判らないことだらけでしたので、少し調べてみました。もし誤りなどあればご指摘ください:
オリンピックについて
誰もが知っている世界的なスポーツ大会「オリンピック」は、国際オリンピック委員会(IOC)が主催しています。そのIOCに承認された各国のIOC下部組織が国内オリンピック委員会(NOC)です。日本におけるNOCは、日本オリンピック委員会(JOC)となっています。
アジア競技大会について
今回の正式競技になると発表された「アジア競技大会(Asian Games)」は、アジア地区のNOCの集合組織であるアジアオリンピック評議会(OCA)が主催する、アジアの国々の為の総合競技大会。“アジア版オリンピック”とも呼ばれるほどだそうです。
ちなみに前回2014年度の競技種目は、飛込、競泳、シンクロナイズドスイミング、水球、アーチェリー、陸上競技、バドミントン、野球、バスケットボール、ボウリング、ボクシング、カヌースラローム、カヌースプリント、クリケット、BMX、マウンテンバイク、ロードレース、トラックレース、馬術、フェンシング、ホッケー、サッカー、ゴルフ、体操競技、新体操、トランポリン競技、ハンドボール、柔道、カバディ、空手道、近代五種競技、漕艇、ラグビー、セーリング、セパタクロー、射撃、ソフトテニス、ソフトボール、スカッシュ、卓球、テコンドー、テニス、トライアスロン、ビーチバレー、バレーボール、重量挙げ、レスリング、中国武術。
2016年リオデジャネイロオリンピック競泳400m個人メドレーで金メダルを獲得した萩野公介選手が、この2014年度のアジア競技大会でもMVP賞を獲得しています。※参考:ウィキペディア「萩野公介」 ※4/20追記
アジアインドア・マーシャルアーツゲームズについて
今年デモンストレーションが予定されている「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」もアジア競技大会と同じくOCAが主催するイベント。アジア競技大会の競技数増加に対応する為、2005年に前身である室内競技を中心とした「アジアインドアゲームズ」が誕生。2013年からは、2009年に分離していた格闘技大会「アジアマーシャルアーツゲームズ」を吸収し、「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」となりました。
eスポーツは、前身である「アジアインドアゲームズ」の2007年度大会より、既に正式競技として取り入れられています。以下、競技となったeスポーツ種目:
- 2007年:スポーツ『FIFA』、スポーツ『NBA Live 2007』、レース『Need for Speed』
- 2009年:MOBA『Dota Allstars』、スポーツ『FIFA Soccer 09』、スポーツ『NBA Live』、レース『Need for Speed』、RTS『Starcraft』
- 2013年:スポーツ『FIFA』、MOBA『League of Legends』、レース『Need for Speed』、FPS『Special Force』、RTS『Starcraft』、格闘『Tekken』
- 2017年:(正式競技としては予定無し)
2013年の鉄拳は『鉄拳タッグトーナメント2』が使用され、Kim Hyun-jin(JDCR)選手が優勝しています。※参考:ウィキペディア「Electronic sports at the 2013 Asian Indoor and Martial Arts Games」
Alisportsについて
提携先として発表されたAlisportsは、GamesIndustry.biz記事によれば「中国の巨大オンラインショッピング企業Alibabaの一部」とのこと。※その他参考:ウィキペディア「阿里巴巴集団」
今後の予定
- 2017年9月「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」(トルクメニスタン):デモンストレーション実施。種目はスポーツ『FIFA 2017』、MOBAタイトル、RTA(リアルタイムアタック)を予定。
- 2018年「アジア競技大会」(インドネシア):デモンストレーション実施。種目未発表。
- 2022年「アジア競技大会」(中国):eスポーツが正式競技に。種目未発表。
つまり、室内競技に特化した大会では既にeスポーツが競技となっていたものの、今度は総合競技大会でもeスポーツが正式競技となることで大きな話題となったようです。『鉄拳』がアジアインドア・マーシャルアーツゲームズの種目になったこともあり、格闘ゲームが正式競技として選出される可能性もゼロでは無さそうです。
日本における問題点
せっかくのアジア競技大会ですが、ITMedia NEWSによれば、日本人選手を派遣できない可能性があるようです。
日本から選手を派遣するには、そのスポーツの競技団体が上で登場した日本オリンピック委員会(JOC)の認可団体になる必要があり、また、その認可団体になる為の条件の1つに「そのスポーツの国内唯一の代表団体であること」が含まれている(※)為、現在eスポーツ競技団体が日本eスポーツ協会(JeSPA)、e-sports促進機構、日本プロeスポーツ連盟(JPeF)の3つある日本では、少なくともその条件を満たすことができない状態なのだそうです。
※文部科学省サイトに掲載されているJOC加盟団体規程に、「当該競技国内唯一の統括団体であること」と記載されているのが確認できます。
※JPeFが加入している国際eスポーツ連盟(IeSF)が、「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」のeスポーツ競技運営を手がける。(OCA公式サイト / ウィキペディア / Negitaku)
※4/25追記:日本プロeスポーツ連盟(JPeF)が日本eスポーツ連盟(JeSF)へと名称を変更。
上記の3団体間でこの問題をどう解決して行くのかが今後の注目ポイントになりそうです。
その他参考サイト
アジアオリンピック評議会(OCA)公式サイト / OCA発表記事 / ウィキペディア「近代オリンピック」「国際オリンピック委員会」「国内オリンピック委員会」「日本オリンピック委員会」「アジアオリンピック評議会」「アジア競技大会」「アジアインドアゲームズ」「アジアマーシャルアーツゲームズ」「アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ」