EVO Japan運営委員長・ハメコ氏へのSRKインタビュー日本語版。「何よりも日本のFGCのためのイベント」
海外大手格ゲーサイトのShoryuken.comが、来年1月に日本で開催される「EVO Japan」に向けて、EVO Japan運営委員長を務める“ハメコ。”こと金子紀幸氏へのインタビューを実施。今回その日本語版をEVO Japan運営チームより頂戴したので掲載させて頂きます。
EVO Japan運営委員長のみならず、選手、メディアライター、実況解説、そしてバンドマンと、マルチに活躍するハメコ氏。インタビューは海外格ゲーコミュニティ向けですが、本家EVOとの違いや、EVO Japanが目指す先も垣間見られる内容となっています。
以下、Shoryuken.comインタビュー(英語)の日本語版:
※インタビュー部分は基本的に原文ママですが、一部当サイトでの補足あり。
Shoryuken.comインタビュアー(以下、SRK):
海外勢向けに自己紹介とバックグラウンドをお願いします。
ハメコ:
皆さん初めまして、Noriyuki 'hameko' Kanekoです。英語圏のFGCでは、SFVにおけるLab Monsterとして知られているかもしれませんね。
私は梅原大吾と同世代で、19歳頃から日本のアーケード専門誌「アルカディア」で「鉄拳」シリーズの攻略ライターとしてキャリアをスタートしたのち、さまざまな格闘ゲームの攻略記事や攻略本を手がけてきました。2011年には4Gamer.netに活動の拠点を移し、格闘ゲームシーンにおけるカルチャーも取り上げるようになったほか、現在は「ストリートファイターV」や「鉄拳7」のコメンテーターとしても活動しています。
仕事柄、格闘ゲームからリズムゲーム、FPSやLoLまで何でも遊びますが、競技者として取り組んだのは「鉄拳タッグトーナメント」~「鉄拳5DR」、「ソウルキャリバーV」ぐらいでしょうか。
古い話をすれば、ここSRK.comに写真が掲載されていたこともあります :)
※補足:“FGC”はFighting Game Community(格ゲーコミュニティ)の略。ハメコ氏の4Gamer記事はこちらから。
若き頃のハメコ氏(右)
SRK:
もちろん、はめこさんは色々なタイタルの強豪ですので、プレイヤーの視点から,はめこさんの参加したの大会の歴史の中で、誇り高い瞬間はいつだった?
ハメコ:
2000年辺りに東京・新宿にて行われた「鉄拳タッグトーナメント」の大会で、世界大会覇者であるSeok Dong Minを破ったときでしょうか。それと、フランス・カンヌで行われたWorld Game Cup 2013において、「ソウルキャリバーV」部門の国別対抗戦で優勝できたのもの良い思い出です。
※補足:World Game Cup 2013についてはこちらから。結果は当時の大会メモにて。
SRK:
2012年に闘劇sbo無くなりました。日本格ゲー勢に関して、どんな影響ありましたか? 今、Sboの後の時代ということですが、賽やksbや闘神祭やevo japanのよう複数タイトルの大会が増えましたが、それらはどんな重要性があると思いますか?
ハメコ:
2011~2012年はちょうど家庭用専用格闘ゲームが増えてきた頃であり(例えば「MARVEL VS. CAPCOM 3」や「ソウルキャリバーV」)、またコアな格闘ゲームファンがストリーミングの手軽さに慣れ始めた時期であるなど状況は複雑でしたが、“日本国内で達成できる最大級の目標”が失われてしまったことは、とくに海外大会に参加しにくい中級者達のモチベーションに大きく影響を及ぼしたように思います。もちろんその後もそれぞれのタイトルでさまざまなトーナメントが行われてきましたが、“そのタイトルのことを知らない人も観戦する大会”は未だあまり多くはありません。
今書いたとおり、2012年の時点でストリーミングカルチャーは既に盛り上がりを見せ始めていましたが、誰もがインターネットに慣れ親しんだ今の時代、みんながみんな自分の興味のある情報だけを追っていて、“あまり興味のないものに触れる機会”はこれまで以上に減っています。そういう意味で、オフラインで行われる複数タイトルの大会は、日本のFGCにとって少なくない意義があると思います。
SRK:
海外で3日形式の大会は結構人気ですけど、日本ではあまり開催されませんが何故ですか?
ハメコ:
日本で行われるイベントのほとんどは中心地である東京に集中していますが、東京で広いイベント会場を借りるには莫大なコストがかかってしまうため、コミュニティだけでそうした会場を数日間借りるのが難しいという点がまずあると思います(大阪ですが、KVOは本当に良くやっています!)。
また、日本にはコンベンションホール自体があまり多くないというのも、欧米のような“ホテル+コンベンションホール型”のイベントが開催されにくい理由でしょう。 さらにいえば、休みが取りにくいという日本の労働環境から来る問題も少なからずありそうです。
WGC2013のソウルキャリバー5国別対抗戦に出場するハメコ氏(ピュラΩ)
SRK:
もちろん、はめこさんはevo japan steering committee chairman に選任されました。個人的に、このポジションはどんな重要性がありますか?
ハメコ:
日本に数多く存在する格闘ゲームコミュニティの要求を汲み取り、可能な限り反映していくための調整役であると自認しています。EVO Japanは本国のEvolutionとは違って企業主体による発足ですし、そもそも歴史がありません。1年やそこらで日本のFGCから信頼を勝ち取るのは簡単ではないでしょうが、少なくとも格闘ゲームのことをほとんど知らない商売人がやるよりは、自分のような経歴の人間の方が向いている仕事だと思います。
SRK:
賽の発表したときに、沢山の人はスト5もメーンタイタルに選ばれると期待しました。最初の訳は「アーケード版がありません」と聞きました。後で「使用権を取れなかった」と言う訳を聞きました。どの訳がスト5がメーンタイタルに選らばれなかった訳ですか?
ハメコ:
「ストリートファイターV」については、「使用許諾を得られなかった」というのが正しいです(ところで、「Smash 4」にアーケード版はありますか?)。
個人的な想いを言えば、日本にはプロゲーマー以外にも優れたプレイヤーたちが沢山おり、彼らにもっともっと活躍の機会を与えたいと強く思っています。とはいえ、これまでのシリーズ作品とは少々異なり、SFVはグローバルなライセンシービジネスへと移行しているようで、日本国内ではなかなか難しい状況が続いています。
もちろん日本の市場は英語圏と比べて小さなものではありますが、とはいえもう少し、各コミュニティが大手を振って、イベントを継続的に開催しやすい環境になってくれればと願うばかりです。この際だからはっきり言っておきましょう――日本国内におけるライセンス使用契約をめぐるバランスは、Boxerなんかよりよっぽど崩壊している部分がありますので、早急にアップデートすべきです。
※補足:このインタビューはEVO Japan種目発表前に行われたもので、EVO Japanにはスト5がメイン種目として決定しています。
闘劇の鉄拳5DR予選に出場するハメコ氏(リリ)4分辺りから
SRK:
賽の後でアンケートを行って、日本人が出した一番多い要望は何でしたか?賽が終わってEvojpに向けて、改善するところはどういう点がありますか? Evojp開催に不安な部分がありましたら、どういう点ですか?
ハメコ:
何より「会場が狭い」という点でしょう。サイドトーナメントを含めると、2日間開催で都合6タイトルを行ったことになりますが、アキバ・スクエアのキャパシティではすでに限界が来ていたように思います。そんなわけで、場合によってはEVO Japanの会場を変更することも視野に入れています(テスト大会をやっておいて本当に良かった!)。
※補足:賽の大会結果はこちらから。
SRK:
(去年の4gamerの記事によって、日本会社から1億円evojpに投資されたから皆の期待が高くなりましたので)他の複数タイトルの日本大会と比べたら、evo japanどうやって違いますか?個人的に、evojapan 向けに、はめこさんのビジョンは何ですか?
ハメコ:
日本では“見るための格闘ゲーム大会”こそ増えていますが、“参加するための格闘ゲーム大会”はなかなか増えていっていないように感じています(もちろんこれはイベントそれ自体の問題だけではありません。先述のとおり、会場が限られるためにオープントーナメントの開催が難しいといったコスト面の問題も大きいのです)。ですからこの機会を利用して、“とにかく記念参加しやすい大会 = 何かの形で誰にでも関われる大会”を目指していきます。
お気付きになったとおり、私はEVO Japanを“何よりも日本のFGCのためのイベント”だと考えています。……まず私達が楽しめるものでなければ、海外から参加してくれた方々が楽しめるはずもありませんから!
SRK:
インタビューを頂いて本当にありがとうございました。もちろん、世界中の誰もがこのイベントを楽しみにしています。ファンや海外の格闘ゲーム勢向けにメッセージをありますか?(宣伝や言いたいことあれば、自由に言ってくださいね)
ハメコ:
ここまで読んでくださってありがとうございます。EVO2017でお会いしましょう。そしてもちろん、日本でお待ちしております!
EVO Japanトレーラー
EVO Japan 2018概要
- 日程
-
2018年1月26日(金)~1月28日(日)
- 会場
-
1・2日目:池袋サンシャインシティ
3日目:秋葉原UDX アキバ・スクエア - 種目
-
ストリートファイターV アーケードエディション
GUILTY GEAR Xrd REV 2
鉄拳7
大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U
BLAZBLUE CENTRALFICTION
THE KING OF FIGHTERS XIV
ARMS - 賞金
-
総額500万円
※タイトルごと総額100万円(スマブラとARMSを除く) - 主催
-
EVO Japan実行委員会
- 関連URL